地方議会制度運営の考察 シリーズ4
法第102条の会議(定例会・臨時会)での 法定活動と法定外活動ってどんな活動
憲法第93条、法第89条の議会(議事機関)での 法定活動とは
議事機関の活動に 会期(会議を継続する期間)は 関係ない!
議会の活動を 幅広く 活用しよう それが 議会の活性化につながる
40数年の経験を生かした地方議会運営等の見解
議会運営アドバイザー、山形県町村議会議長会前事務局長
武 田 裕 樹
今回は、シリーズ3でご紹介した「議員の辞職日とその効果の時期」の前に、議員や議会からの照会があった、「議員の法定と法定外活動、調査活動」について、先にお話をさせていただくことにしました。なお、内容については、多くがシリーズ1と重複しますので、ご了承ください。
また、詳細はシリーズ1をご参照ください。なお、文中「法」は地方自治法を指します。
1 議会の活動とは - 地方自治法第102条の議会 -
➀ 定例会・臨時会(本会議)(委員会含む。)
⑴ 根拠規定
⒈ 地方自治法第102条第1項「普通地方公共団体の議会は、定例会及び臨時会とする。」
「会期とは、議会が会議を継続して行う期間であり、議会は開会中に限り活動能力を有する。」
と一般的な解釈とされています。
⒉ なお、委員会の継続審査・調査や議員・委員派遣、協議・調整の場(全協)は、閉会中の活動も
可能です。
⑵ 議会の活動 - 役割・職責から -
⒈ 議会の役割と職責(概略)
1) 地方自治法第89条第2項「普通地方公共団体の議会は、この法律の定めるところにより当該普
通地方公共団体の重要な意思決定に関する事件を議決し、並びにこの法律に定める検査及び調査
その他の権限を行使する。」
2) 議会は、地方公共団体の政策形成過程と政策の実施過程において、多面的に参画し要所で重要
な意思決定をする。
3) 議会は、政策決定を中心に、執行機関の行財政の運営や事務処理、事業の実施がすべて適法適
正・公平・効率的に、そして民主的に実行・実現されているか、批判・監視する。
4) 住民複数の利害や価値観が共存する条件を作り出し、相対立する意見を調整し、住民統合の意
思を形成する。
5) 政策決定過程及び政策課題の解明と住民への周知。
6) 最善の政策選択を決定する。
7) 政策選択の結果の説明と説得。
⒉ 議会の活動の意味 - 役割と責務を果たす活動 -
1) 法第102条の議会は、定例会・臨時会という会議であり、会期とは会議を継続するための期間
であり、議会の活動能力は会期中のみ有する。つまり、会期とは「複数回の会議を重ねて最終の
意思を決定するまでの期間」と言える。
2) 原則、地方公共団体の意思、議事機関の意思は、会議によって決定されなければ、何も実行す
ることができない。
3) 最終的な意思の決定を行うための様々な手続き等もまた、会議の決定によるものである。
議会の構成に係る事件に限らず、議会が行う選挙や辞職なども会議で行われる。
4) 議会機能(議会の能力)例 立法機能、行政監督機能(監視機能)、財政機能、議決機能等
5) 議会の最終意思決定に必要な、又は議会の役割・責務を成し遂げるための活動例
ⅰ 議会の権限例⇒検査権、監査請求権、意見書提出権、調査権、議決権等、委員会の調査権等
ⅱ 調査活動 調査(情報収集、分析、研究)、政策形成・立案 など
ⅲ 審議活動 議案等審議(討議・討論、表決) 参考人・公聴会・専門的知見の活用など
6) これらの活動は、議会の活動能力として、会議を継続するための期間「会期」内でしか能力を
発揮できないものもあるが、例えば、条例等の成立によって、執行・実行・実践するのは最早
会期に関係がなく、むしろ会期後の活動であり、それは「議事機関」としての活動と言える
ものも当然に存在する。また、議事機関としての調査活動なども考えられます。
② 議員の活動
⑴ 議員の役割と職責
⒈ 議会の活動は、その構成員たる議員が実行することにあるだから、議会の活動と議員の活動は、
表裏一体の関係にあることは明白である。
⒉ 地方自治法第89条第3項「地方自治法第89条第2項に規定する議会の権限の適切な行使に資する
ため、普通地方公共団体の議会の議員は、住民の負託を受け、誠実にその職務を行わなければなら
ない。」
⒊ 住民の意思を行政にできる限り反映させる。
⒋ 住民への議会の決定(意思)の説明等の責任。
⑵ 法定活動と法定外活動
⒈-1 法定活動
1) 議員の活動は、議員の役割や職責を果たすための活動であり、それが議会の役割・責務に直結
する。
2) 議員活動は、議会の活動と表裏一体であるから、原則、議会の活動期間でしか活動できない。
さらに、議員の活動は、原則、「会期中」に「議会の決定」によるものであり、裏付けされた
活動を「法定活動」と分類することができる。
3) ただし、議員の活動では、条例や現行の地方自治法等によって、会期外での活動が可能である
ことを理解すべきである。これは「議事機関の法定活動」と言える。
⒈-2 具体的な現行法の解釈等に基づく法定活動例
1) 監視力・政策提言アップへ繋がる活動
ⅰ 議案審議 本会議、委員会での審議等、議員派遣、協議・調整の場、議会基本条例等各種
の条例制定・運用、議決事件の追加、参考人、専門的知見の活用
ⅱ 会期日数 通年会期(通年議会)の導入
ⅲ 委員会審査 委員会調査活動(付託事件審査・調査、所管事務調査)、委員派遣、政策提言力
の向上
ⅳ 研修 議案審議・審査等専門的研修
2) 地域・住民との連携強化等(住民自治の理解・自覚、醸成等)(本会議・委員会主催)
ⅰ 住民対話 議会報告会、出前議会、住民懇談会、ワークショップ、ワールドカフェ等
ⅱ 住民参画・協働 公聴会、政策サポーター、議会モニター、議会アドバイザー、その他の
調査会・付属機関
ⅲ 地域連携 産官学との連携、各種団体との意見交換など
ⅳ 広報公聴 HP・広報紙の充実、議会のデジタル化、広報モニター
⑶ 法定外活動
1) 議員の会議にかかる活動は、議会や議長の決定によるものだけが活動ではありません。
2) 議員の役割や職責を果たすための活動には、日常的な活動も含まれます。
⑷ 議事機関の法定活動
1) 前述の➀定例会・臨時会、⑵議員活動、⒉議員活動の意味、を参照。
ⅰ 公共団体・議事機関の意思は「会議で決定」されなければならない。
ⅱ 会期は「会議を継続する期間」であり、この期間は通常、最終意思が決定するまでである。
ⅲ 最終意思が決定されるための様々な手続きの決定もまた会議の決定による。
ⅳ この手続きには、調査権・検査・監査請求権などが含まれる。
ⅴ これらの活動能力は、「会期中のみ」とされているので、会期内で完結する。(一部除く)
ⅵ しかし、決定は「会議」でなければできないが、執行・実行は、必ずしも会期内で完結しな
いものもある。
2) このような議会の決定の中には、決定された事件の性質上、その執行・実行は、会期内であ
れ、会期外であれ、憲法第93条や法第89条の「議事機関」の組織の活動とされるものもある。
3) さらに、現行地方自治法の規定の中には、すでに本会議の決定や議長の許可等にかからない、
会期外での議員の活動があり、この活動の性質もまた議事機関としての議員の活動と理解するこ
とができる。(全員協議会(法定)、議員の招集請求、議会事務局の業務等)
2 議事機関としての活動 - 憲法第93条、地方自治法第89条第1項の議会 -
➀ 議事機関の活動
⑴ 法定活動における議事機関の活動 - 条例の制定・規定は絶対要件 -
⒈ 議事機関の活動で、すでに地方自治法等に規定されているもの以外で、法定活動とされるために
は、「条例」の制定・規定化が不可欠です。
⒉ 議会基本条例や個別の条例策定や規定によって、議事機関の活動を保障し会期にかかわらず、
活動ができることになります。
⑵ 具体例 (すべて議事機関としての議会が実施主体、主催するものです。)
⒈ 活動の検証 議会のあり方研究会、議会白書
⒉ 研修等 議員の資質向上等のための研修、ハラスメント防止のための研修、主権者教育の
講演等
⒊ 会議・会合等(議事機関(議会)が主催)(住民との対話、住民参画・協働、地域連携含む)
議会のあり方研究会、議会報告会、出前議会、住民懇談会、ワールドカフェ等。
政策サポーター、議会モニター、議会アドバイザー、その他の調査会・付属機関。
政治倫理審査会、ハラスメント認定委員会(第三者委員会)・審査会、個人情報に係る審議会(議
会)、模擬議会、主権者教育施策など。
※ 産官学との連携会議、長・地域・団体等との促進大会・期成同盟会等への参加、小中学校の入
学式や卒業式等各団体を含めた各種行事等への参加(依頼)は、「議事機関の活動」なのは明白で
あるが、実施主体が議会にないので、このような行事等への参加規定を議会基本条例等へ明記
することも考えられます。
※ 模擬議会や主権者教育の一環としての施策などは、法第102条による定例会・臨時会に一切
関係はありません。これこそ、「議事機関としての議会」の活動と言えます。
⒋ 要請・要望活動
意見書・要望書等の要請・要望活動、長や地域・団体等との連携による要請・要望活動等
※ 促進大会・期成同盟会大会等は要請・要望活動と考えることもできる。
⒌ その他 防災・災害対策(議会BCP計画等に基づく活動) ハラスメント相談窓口(議会)
② 「派遣」と「招集」を理解しよう!
⑴ 派遣とは
⒈ 議会(本会議・委員会)や議長がその任務に対して、差し向けることです。
⑵ 招集とは
⒈ 招き集めること、集まることを促すことです。
⑶ 実施主体・主催はどこにある
⒈ 法第102条の議会や議事機関が実施主体・主催となる会議・会合等に議員が参加する場合は、
「招集」であって、「派遣」ではありません。
⒉ 例えその「場所」が、議場や委員会室でなくとも、また、議事機関の会議・会合においても場所
は問いません。
⒊ 「報告会」や「懇談会」などが、本会議・委員会、又は議事機関の主催であれば、例え「公民
館」や「集会所」でやる場合でも、議員に対しては「招集」です。住民に対しては、参加を求め
る、要請するものです。
⒋ 一方で、例えば、本会議や委員会での調査活動のひとつとして、他の先進地に赴く、町内の婦人
会等主催の会合等におじゃまして、意見交換会をやるなどは「派遣」です。
特に、住民との対話、住民の参画・協働につながる活動は、開会・閉会問わず、条例に具体的に明記して、かつ、会議・会合等は議長の招集により、機動的に能率・効率的な活動を通じて、住民自治を目指す議会に誰が異をとなえるでしょうか。
現行の国際社会情勢等をも踏まえて、現実的には「議会には議員の管理・監督責任」が生じていると認識すべき。
前述の「活動」「管理・監督」等については、シリーズ1に詳細に紹介していますので、ご覧ください。