地方議会制度・運営の考察 シリーズ6
条例制定によって議会活動を柔軟に理解し、拡大しよう!
会期に縛られない 議事機関の活動なら いつでも活動はOK!
会議・会合のポイントは「議長の招集」 議員の業務って?
40数年の経験を活かした地方議会運営等の見解
議会運営アドバイザー、山形県町村議会議長会前事務局長
武 田 裕 樹
これまで、議会の活動等については、2回の見解を示してきましたが、今回は少し視点を変えて、お伝えしますが、前2回と、ところどころ、重複していますので、ご了承ください。
Ⅰ 議会の運営・活動は 2つに分けられる。
1 会議等にかかる活動
⒈ 地方自治法第102条の定例会・臨時会、委員会の会議にかかる活動
⒉ 議会の権限等にかかる事項に伴う活動や会議などにおける事項の活動があり、具体的な根拠等に
ついては、地方自治法第二節権限第96条から第100条の2、第三節招集及び会期第101条から102条
の2、第四節議長及び副議長第103条から108条、第五節委員会第109条、第六節会議第112条から
第123条、第七節請願第124条から第125条、第八節議員の辞職及び資格の決定第126条から第128
条、第九節紀律第129条から第133条、第十節懲罰第134条から137条までが、会議にかかる事項で
あり、事項によっては活動等が伴う。
2 議事機関にかかる活動等
⒈ 憲法第93条、地方自治法第89条第1項
⒉ 議事機関としての目的、活動、業務、構成などがあり、簡単な根拠は、地方自治法第一節組織第
89条から第95条までに規定されているが、内容的には、組織運営に必要な事項には程遠い。
⒊ そこで、議会基本条例の制定や個別の条例等によって、組織の活動・業務・構成にかかる根拠を
策定している。
Ⅱ 議会の権限強化、充実と責務を果たすための活動等
1 議会の目的・役割等を果たすための権限等の強化
議会の目的・役割等を果たすため、権限等を強化・充実させることは、当然に必要なことであり、全国三議長会によって、重点要望事項として、その実現を求めている。
さらに、議会がどのような方法によって、目的や役割を達成することができるのか、例えば機能強化や調査能力の充実等によって、政策形成や立案などの向上を図ることが不可欠とされている。
加えて、議員の議会における能力向上、政策形成等の習得・経験値等熟練度を高めることが求められている。
2 調査・審議機能の強化
前述しているように、会議等にかかる活動の拡大については、特に調査機能を強化する必要があり、そのために住民との参画、協働による、懇談会・報告会、意見交換会、調査会など数多くの住民との接触の機会を設けることとしている。
3 会期がないと活動ができない
前述している住民との接触の機会については、会議にかかる活動として見るなら、会期内での活動となるから「会期」が、重要な「要素」「前提」となる。もちろん、一部、手続きによっては、閉会中に行うこともできる。
4 本会議や委員会でやるためには – 本来、会議・会合は作れない –
住民との接触の機会を会議・会合として位置付けるのならば、単独では、本来、作れない。
名称をどのようにしても良いが、⒈協議・調整の場とする。また、⒉本会議での「専門的知見の活用」、⒊「参考人」「公聴会」の方法が考えられる。
5 条例で作ることは可能 – 現実的な会議・会合 実質的な内部組織・付属機関 –
条例で、住民との接触の機会となる会議・会合等を設置することも考えられる。
また、このような条例を策定している議会は多数ある。
その具体例としては、「議会報告会」「住民懇談会」「意見交換の場」「出前議会」「一般会議」「議会モニター」「議会アドバイザー」など。
また、内部機関として「調査会」や「研究会」などを設置している。
なお、これらは、「議会基本条例」に規定している議会もあし、個別に「条例化」している議会もある。また、条例に対して個別の「規程、要綱、要領等」を策定している議会もある。
これらは、いわゆる、議会の実質的な「内部組織」「付属機関」と捉えることができる。
6 議会の議決で設置、実施 – 会期が必要となる –
前述している、報告会等住民との接触の機会、調査会や研究会等を条例に規定している多くの議会
では、「議会の議決により設置する」としている。
このような規定の仕方では、まず、「本会議」の開催による「議決」が必要であり、議決による会議・会合の設置や実施は、「会期」が必要となる。
このような場合、委員会の内部組織・付属機関の取扱い、参考人、公聴会等によるときは、継続によって、閉会中に委員会の審査・調査として行うことはできるが、本会議の主催等で行う場合は、閉会中にはできないことになる。
Ⅲ 議事機関の目的を達成するための活動・業務等を認識しよう!
1 地方分権以降に必要な議事機関の活動・業務等の拡大 – 議事機関の活動・業務の明確化 –
地方分権による機関委任事務の廃止等に伴う権限移譲等により、地方公共団体は自らの手で自立したまちづくりを目指すことが求められ、そのため、最終意思の決定を行う「議会」の役割・責務を果たすために、これまで以上に、議会の重責が飛躍的に増大し、議会の重要性が拡大した。
これによって、議事機関としての議会は、会期だけでの「活動」では、本来の議事機関としての議会の目的・活動・業務等が果たせない状況にあることは、「明白」となった。
さらに、これまでも、議事機関としての議会の活動・議員の業務と位置付けられるものも整理し、議事機関の議会としての活動・業務等を明確にすることが不可避となった。
2 国際社会情勢等による議事機関の活動・業務等の拡大 – 国や住民が求める議会への対応等 –
近年の国際社会情勢等によって、議会・議員のあり方が現行法では、語れないほどに激変した。
これまでの議会は、「会期」による議会活動のみ、とされている。
また、「議会と議員の間には雇用関係・労使関係がない」「議会は職場ではない」「議会・議員は労働基準法の対象とはならない」と解釈されている。実際、議員には「就業規則」も「服務規程」もありません。
この解釈は、今も変わりはないが、特に、多様性や価値観の違いなどと相まって、個人への関心ごとが高まり、ややもすると「誹謗・中傷」となってしまう場合も見受けられている。
さらに、職員や議員、住民に対する接し方も、「これまで」は通用しない。
加えて、「政治と金」や特に職員や住民、議員間における「ハラスメント」に対しては、国民ひとりひとりが敏感となり、その言動を常に注視するようになった。
このようなことから、国は改めて議員の品位・品格等の観点から議員の言動に対する自覚を認識するようその対応を求めるとともに、国際社会情勢等に伴う対応等(個人情報保護やデジタル化等)を議会に求めている。
また、住民も日常的な議員の言動に対して、例外なく、倫理に反するのではと判断したときは、議会に、その対応を求めてくる。
加えて、昨今の「自然災害の頻発」などにより、議会としての業務継続計画が不可避となった。
3 議会には議員の管理・監督責任はない
前述したように、「議会と議員の間には雇用関係や労使関係がない」などの理由から「議会は議員の管理・監督責任」がないとされています。
議会が、議員に対する倫理等を含めた対応は「会議内」だけの「懲罰」しかありませんので会議外での言動では、法律的に議会の対応はありません、できません。
しかも、議員には、服務規程や就業規則等がなく、議員には勤務時間がないので、住民からの相談に対しては、いつでも応じることになるでしょうし、任意の議員活動はいつでも行うことはできるものです。また、前述したように、会議内における規律はあっても、会議外では、規制がかかりません。議員には政治家としての政治的責任と一般的な道義的責任が伴うだけです。
なお、いわゆる「問責決議」や「辞職勧告決議」などを議会として提出することはできますが、それには、議会を開かなければなりませんし、この対応は当該議員に対する拘束力はありません。
しかし、議会も国際社会情勢等に鑑みて、一般的な認識により組織である議会が「議員の管理・監督責任はない」などとは言っては、いられないのです。
現実的にも、住民の要求もありますし、国等の要請等からも、議会に議員の管理・監督が求められていると言えます。例を挙げれば、国からのハラスメントに対する対応や議員の欠席届における「期間」を規定化するなど、または、議員の請負に関する公表や議長会が議員の厚生年金加入要望を行うなどは、まぎれもなく、議員にかかる問題であり、このことからも、議会が議員の管理・監督責任を考えていかなければならない状況になっているのです。
これらは、まぎれもない、「議事機関の定款にあたる、目的を達成するための活動・業務」であり「議員の構成にかかる」ものです。
Ⅳ 議事機関としての議会の活動・業務等は条例によって担保される
1 条例を作って議員の活動等を担保しよう! - 公務災害の明確な対象 –
議事機関としての活動、業務等については、条例を策定することが不可欠です。
前述している、住民との接触の機会となる会議・会合、調査会・研究会などについても議事機関の活動・業務等と位置付けることが必要です。
その場合、⒈条例を作る(議会基本条例等に規定、または、個別に条例を作る)、⒉「開催(実施)は議長の招集による」と規定すること。
これによって、通年を通して設置することができ、いつでも実施することができる。
さらに、誰がどう見ても、議事機関の活動・業務と言えるものがあり、それらについても⒈条例を作る(議会基本条例に規定、個別の条例)、⒉実施等については「議長の招集、指名、派遣(法100の2除く)」等の方法を規定すること。
なお、「議員の業務」とは、例えば「議員の臨時会招集請求の手続き」や「一般質問の通告書の提出」「議案の提出」「「各種の届出書の提出」などは、議員の活動というよりは、日常的ではないが、議員の業務という方が適当ではないでしょうか。
条例に規定することは、議員の活動・業務を担保するものであり、このことによって、公務災害の対象とすることもできるのです。
前述した、従来の会議外の活動、議員の「業務」では、その手続き上の行動に対して、公務対象となるかは、明確ではありません。しかし、これは、少なくとも「地方自治法や会議規則等」に規定されていることに付随する行動ですから、当然「公務」と認められるべきものです。また、新たな「議員の請負に関する条例」などに付随する議員の行動も当然に「公務」として認められるべきものです。なぜなら、条例で議員の届出を規定しているからです。
このように、議員の公務上の活動が担保されるよう、地方自治法や会議規則にないものは、条例に規定することが、必要不可欠です。
具体的例1
「議会報告会・懇談会」「議会モニター・アドバイザー」「議員政治倫理審査会」「ハラスメン認定委員会(第三者委員会)」「ハラスメント審査会」「調査会・研究会(機関の付属・内部機関)」など
具体的例2
「意見書の要望・要請活動」「長との要請活動」「他の団体等との協働による要望・要請活動」など
具体的例3
「議会主催による研修会(議員の資質向上等、ハラスメント防止等)」「他の団体等が主催する研修会(議員の支出向上等)」「議会パブリックコメント」「模擬議会」「促進大会・期成同盟会」「その他の行事等(入学・卒業等)」など
具体的例4
「議会基本条例」「議会事務局設置条例」「議会議員の定数条例」「政治倫理条例」「ハラスメント防止条例」「議会政務活動費の交付に関する条例及び施行規程」「地方議会のデジタル化手続き条例及び施行規程」「議会の個人情報の保護に関する条例及び施行規程」「議会議員の請負の状況の公表に関する条例及び施行規程」「議員の報酬及び費用弁償に関する条例(減額規定)」「長期欠席議員にかかる減額条例」など
具体的例5
「地方議会の情報通信技術の活用に関する規程」「議会公文書管理規程」「議会議員徽章規程」「議会図書室規程」「議会議員の旧姓等の使用に関する規程」「議会のBCP」「議会の中継に関する要綱」「議会パネルの使用に関する取扱要領」「議会インターネット等情報配信使用ガイドライン」「ハラスメントにかかる窓口相談室」「議員の資質向上等にかかる研修会実施要綱」など
議会の活動と議事機関の活動等を区別する必要はない
設置は「条例」、実施は「議長の招集、指名、派遣(法100⑫除く)」等を規定すること
これなら議員の活動や業務は拡大される 設置は常設 実施や手続きはいつでも