説明員の不適切な言動に対する取扱いを規定化しよう

地方議会制度・運営の考察 シリーズ8

説明員は、地方自治法や会議規則の秩序維持、品位の保持は適用されない?
説明員(答弁)の議場の持込は、どこまで許される? 不適切な言動への対応は?
説明員(答弁)の発言取消しはできるのか?  制限はないのか(時期・内容等)
「できない」と規定されていない以上、「できる」と理解されることは合理的
潜在的ルールは、共通ルールになり得ない時代に!

                 40数年の経験を活かした地方議会運営等の見解
                 議会運営アドバイザー、山形県町村議会議長会前事務局長
                        武  田  裕  樹

はじめに 秩序維持や品位に伴う、「発言・答弁」・持込や服装等について解説します。

1 地方自治法や会議規則は、議員だけに適用される?

⒈ 地方自治法第129条の「議場の秩序維持」は、「会議中、この法律又は会議規則に違反しその他
 議場の秩序維持を乱す議員があるときは、議長はこれを制止し、又は発言を取り消させ、その命令
 に従わないときは、その日の会議が終わるまで発言を禁止し、又は議場の外に退去させることがで
 きる。」と規定しています。
  この規定では、秩序を守るのは「議員」であり、秩序維持のための権限は議長にあります

⒉ 地方自治法第132条の「品位の保持」は、「議会の会議又は委員会において、議員は、無礼の
 言葉を使用し、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。」と規定しています。
  この規定では、品位の保持の対象は「議員」です。

⒊ 地方自治法第133条の「侮辱に対する処置」は、「議会の会議又は委員会において、侮辱を受け
 た議員は、これを議会に訴えて処分を求めることができる。」と規定しています。
  この規定では、侮辱を受けた議員と規定されているものの、相手方は明確にされていません。
  しかし、この「処分」を求め、議会で議決された場合の「処分は」地方自治法第134条・第135
 条による「懲罰」であると解されます。この「懲罰」の対象は、「違反した議員」と明記されてい
 ることから、第133条の相手方は「議員」と推測されます。

⒋ 会議規則第6章「発言」は、すべて議員の発言に関する規定と理解される。
  会議規則第50条「発言の許可等」では「議席」とあるので、議員を指すと解されます。
  ちなみに、説明員の席を「議席」とは呼ばず、「理事者席」「執行部席」などと呼んでいるのが
 一般的な例です。
  同第51条「発言の要求」では「議席番号」、同第52条「討論の方法」では「討論」は議員の権
 限、同第53条「議長の発言及び討論」では、「議長が議員として発言しようとするときは」、と
 それぞれ規定されており、その他の規定の解釈を含めても、この発言は「議員の発言」と理解する
 ことができます。
 
  ところで、会議規則第54条「発言内容の制限」の第1項・第2項の規定には、「議員」と特に規
 定されていません。
  では、説明員が不適切な発言をした場合、第2項の「議長が注意し、禁止することができる」と
 の規定を、直ちに説明員にも適用できるのか、と問われれば、第54条を根拠にすることには無理
 があると考えられます。
  つまり、会議規則の「発言」の規定の流れ等から、会議規則第54条も「議員の発言」に対する
 規定と理解することが妥当であると言えます。

このように、地方自治法や会議規則では、議員の言動に対する規定と理解されます。
では、このように理解すると、説明員・答弁者の言動に対して、議会は「対応ができない」のでしょうか。

2 解釈によって、説明員・答弁者に適用できると解される規定

⒈ 地方自治法第104条の「議長の議事整理権・議会代表権」は、「議長は、議場の秩序を保持し、
 議事を整理し、議会の事務を統理し、議会を代表する。」と規定しています。
  この規定では、「議員」と規定されていません。
  また、この規定の特徴は「議場を保持し」とあり、地方自治法第129条の「秩序維持」と異なっ
 ています。
  「保持」とは「自分のものにして、そのまま保ち続けること」、「維持」とは「現存の状態をそ
 のまま保つこと」と解されています。
  どちらも、同じような意味ではありますが、「保持には会議の主宰者である議長が会議を統括
 し、議場の秩序を保ち続けること」が議長の役割と理解され、それが明文化されていると解する
 ことができます。
  よって、「保持」するためには議場にいるすべての者に対して議長の権限が及ぶと理解しなけれ
 ばその役割を果たすことができません。このようなことから、議場にいる説明員・議員・事務局職
 員等すべてにかかるものと理解できます。ただし、ここで留意することは、「保持」するための権
 限であって、「罰則を科する」ことを意味するものではありません。

⒉ 地方自治法第131条の「議長の注意の喚起」は、「議場の秩序を乱し又は会議を妨害するものが
 あるときは、議員は、議長の注意を喚起することができる。」と規定しています。
 ➀ この場合、議長に注意を促すのは議員としていますが、その相手方については、特に「触れ
  ていません。」
 ② 相手方に対する「注意」は、法第129条の「注意」とは異なると解することもでき、さらに、
  法第134条の「懲罰」に影響を与えるものではないと理解することもできます。
   このようなことから、その相手方は「議場にいる者」と理解することもできます。
※ 疑問  注意でも聞かない「者」に対しては、どこを根拠に議長が対応できるのか。
  議員には、法第129条により「議場の外に退去させることができる。」
  傍聴者には、傍聴規則第11条により「退場させることができる。」
  しかし、「説明員・答弁者」には、その根拠が示されていません。

⒊ 会議規則第103条の「携帯品」は、「議場に入る者」の非携帯品を明記しています。
  この「議場に入る者」には、説明員・答弁者も含まれると解することができます。
  また、同第106条の「禁煙」、同第107条の「新聞等の閲読禁止」、同第108条の「許可のない
 登壇の禁止」については、「何人も」と規定されていることから、議場にいるすべての者と理解す
 ることができます。

⒋ 会議規則第104条の「議事妨害の禁止」は、「何人も会議中は、みだりに発言し、騒ぎ、その他
 の議事の妨害となる言動をしてはならない。」と規定されています。
  この「何人も」には、議場にいるすべての者と理解することができますが、
※ 疑問  この規定中の「発言」は、第6章での「発言」を指すものと解釈するのか、説明員の答
   弁等を発言として解釈するのかによっても異なるものと考えられます。
    つまり、この規定の「発言」をどのような意味で理解するのかが、ポイントとなります。
  私は、「この発言」は、説明員の答弁も含むものと考えて良いのではと思います。
  つまり、第6章の議員に関する発言とは異なると理解します。でなければ、冒頭の「何人も」に
 する必要がありません。議長は、議場の秩序を保持することができないことになるからです。

3 現行の取扱い

⒈ 説明員の議場への持込等  - 議員の取扱いを準用(準用規定はない) -
  議場への持込等については、前述したとおり、規定によっては、「議場にいる何人も」と解釈す
 ることができるので、これらの規定が適用されるものと解します。
  これらの規定にないところでも、基本的には、「議員に対する取扱」を例としています。
  しかし、時代の変化によって、執行部や議員全体に言えることは、例えば、服装ひとつとって
 も、今や「クールビズ・ウォームビス、ナチュラルビズ、やまがたコンフォートビス」や宗教上の
 問題、価値観の違い(マスク等)による着用など、服装等の画一化を求めないといったこともあり、
 どこまでの服装なら、議場への入場や、傍聴を認めるかといった問題も起こっています。
  では、極端な話、短パン等の服装は、水着のような服装は、ドレスでも良いのか、まるっきり顔
 等が見えなければ「代理出席(なりすまし)」の不安をどう対処するのか、と言った疑義もあるで
 しょう。

⒉ 激変する社会の考え方
  「会議や傍聴に適した、相応しい服装」とは何か、個々の「良識」「常識」をもって、対応を
 図られることが、今の時代できるのでしょうか。
  「良識」「常識」の基準はどこに、置けばいいのでしょうか。
  「価値観の違い」「個人化社会」「個性豊かな」等を理由に、「良識」「常識」は共通ルールに
 なり得るのでしょうか。
  また、「運営(運用)規程等」に、詳細が規定されていれば別ですが、「詳細の規定がない」以上 
 服装は自由ということになります。ただし、「議会の品位」という点で、裸では品位が損なわれる
 と誰もが思うでしょうが、この「品位」をどのように考えるかにもよると考えられます。
  それこそ、価値観の違い、多様性と言われてしまうでしょう。
  しかし、多くの疑問が生ずる時代ではあっても、複数人による会議、多くの人に公開される会議
 である以上、一定の基準化が図らなければ、社会の秩序は根底から崩れてしまいます。
  だからこそ、規定化の必要性を訴えたい

⒊ 問題は増え続ける  良識・常識の共通認識の乖離と崩壊
  実際議会でも様々なことが生じており、一部では報道もされています。
 ➀ 長の議場への写真機持込と撮影
   長が議場に写真機を持込み、会議中に撮影(会議風景、議員等)したという事例がありました。
   この持込と撮影については、会議規則に照らしても持ち込むことは可能と解されています。
   もちろん、議員にも言えることです。
   また、本人も撮影(録音)の使用禁止の規定がどこにあるのかという疑問を呈しています。
   当然です。「持込み」と「使用」が明確に区部されていない以上、使用に対する「禁止規定」
  がない以上、持込が自由であれば、「使用」もまた、自由と解されます。
   また、「常識的に会議では使用しない!」、誰の常識、いつの常識、一般的な常識って何?
  との疑問を呈する人もいるでしょう。
  ※ さて、ここで問題を提起しよう
  ⒈ 長や議員の本会議等での撮影・録音には「許可」が必要でしょうか。
  ⒉ 説明員や議員等に「肖像権」はあるのでしょうか。(会議中)
  ⒊ 自撮り、他人を撮影、議場風景等を自身のブログ等に公開することは可能か。
  ⒋ 会議録が公開される前に、自身の発言・答弁を自身のブログ等に公開することは可能か。
  ⒌ 会議録が公開される前に、他人の肖像・発言・答弁を自身のブログ等に公開し、それに対
   するブログ者自身の意見を掲載することは可能か。
  いかがでしょうか。
 ② 議場で議員がゲーム
   会議中に議員席でタブレットや携帯でゲームをしていたのが、傍聴者に見られていた、という
  事例がありました。 もちろん、言語道断ですが、良識・常識の問題であり、道義の崩壊です。
 ➂ 道義的責任とは何
   某県知事は、「道義的責任とは何なのかわからない」と発言しています。
   よく、政治家には、政治的責任と道義的責任が求められていると言われています。
   政治的責任とは、「権力行使の結果生じた政治的結果に対する政治行為者の責任」
   道義的責任とは、「道徳や人として行うべき道理などから生じる、任務を行うべきであると
    いうこと、あるいは、任務を行わなかったことによる責め」などを意味します。
    道義的責任では、法的な責任や罰則が伴うものではありません。
    例えば、自動車事故を起こした加害者が、被害者に対して謝罪、お見舞いなどは、社会人と
   しての良識ある行動であり、責任と言えます。それができなければ、人としての信用を失うこ
   とになります。しかし、現代では、すべて「保険担当者」がやってくれるから「本人」は何も
   しなくとも、という考えの人もいるようです。
    しかし、特に政治家としては、いかがでしょうか。それこそ政治家としての品位・資質が問
   われませんか?

つぎに 不適切な発言・答弁について解説します。

1 議員の不適切な発言に対する取扱い  - 議長の対応と発言の取消し –

⒈ 地方自治法第129条、会議規則第54条(前述のとおり)
  法129条では、議長は「議員に対して」発言を制止、注意、禁止、退去させることができます。
  また、会議規則54条でも「注意や禁止」を規定しています。
  条文内容は、前述していますので、そちらをご覧ください。
 
⒉ 議員などに対する説明員の侮辱等の不適切な発言に何にもできないの?
  説明員には、前述したように、規定はありません。
  では、説明員が議員に対して「侮辱を含む不適切な発言」や「一般的な不適切な発言」を「して
 も」何ら対応ができないことになるのでしょうか。
  このようなことが、逆に維持されれば、議会運営が不安定な状態、混乱を招くなど、議会の品
 位・信頼を低下させるものとなる等が考えられます。
※ 疑義
  侮辱された議員(本人の認識)は、直接、長に対して「謝罪等」「発言の取消し」を求めることが
 できるのか。相手が了承しなかったらどうする。議長を経由して長に求めるのか。
 なお、刑事・民事で相手方を訴えることは、個人の判断によるところなので、議会・議場での取扱いとは異なることから説明は省略します。

⒊ 地方自治法第104条 - 第129条を準用 –
  このようなことから、前述したように、地方自治法第104条を根拠に、「議長の秩序保持、議事
 整理権によって」説明員に対応することができると一般的に解釈しています。
  その際の、議長の取扱いとしては、法第129条の「制止、注意、禁止、退去」が準用されること
 になるでしょう。
  しかし、ここで疑義も生じます。
 ➀ 侮辱された議員(本人の認識)は、直接、長に対して「謝罪等」「発言の取消し」を求めること
  ができるのでしょうか。仮に、長が「拒否」したらどうしますか。
   議会は手をこまねいていますか。
 ② どこまでを準用すれば良いのか。議案の提案者である「長」が発言を禁止されたり、退去す
  るような事態になれば、審議は中断することになるということです。そのような取扱いをしなけ
  ればならないほどの不適切な言動であったとすれば、「発言の禁止も」妥当と考えられます。
 ➂ 説明員自らが発言の取消し・訂正を求めることができるのか。(会期内・外)
 ④ 議長や議員が説明員に対して発言の取消しを求めることはできるのか。(会期)
   議員の発言取消し等に関する解説は省略します。

現代は 「できない」がなければ「できる」と判断される
  「良識・常識」は共通ルールになり得ない 社会通念は大きく変容している

1 なぜ規定化されないのか

⒈ 議会は議員によって構成され、議員の合議により、最終意思の決定が下されます。
  故に、議場の秩序や議会運営等に関する規定は、この構成員に対するもので十分とされたのでは
 ないでしょうか。要は、提案された議案の説明をするための者であって、会議の構成メンバーでな
 いと考えられていた、と言うのが大きな理由ではないでしょうか。
  でなければ、どうして説明員だけが特別扱い的な位置付けとなっているのか理由が付きません。
⒉ 民主主義の観点では、説明員であっても提案者であり、実施者である以上、会議に参加する全員
 がどのような形であっても、協議に加わっていることになるのですから、議場の秩序、議会運営の
 観点から、協議に参加している全員が対象とならなければ、おかしな話です。
  また、議長の会議を主宰する立場からも、説明員に対して、明確に取り扱えないのは合理的では
 ありません。
  説明する者であっても、不適切な発言、行動などが「ない」とは言えないはずですが、その際の
 取扱いが、「ひとことも」明確に規定されていないのは「怠慢」「粗漏」と言わざるを得ません。

2 常識・良識を盾にできない

⒈ 前述しているように、地方分権以降、条例制定権において、これまでの授権がなければ条例制定
 はできないとする解釈から「できない」とする規定がない以上は「できる」と解釈することが合理
 的であるとの解釈が用いられるようになったこと。
⒉ 加えて、現代社会の多様性や価値観の違いなどにより、潜在的ルール(慣例、申合せ、道徳、常
 識)などは共通ルールにならないことから、「ない」なら「可能」と解することを禁止できないこ
 と。(例・使用の禁止がないなら使用は可) 
このようなことが、大きく影響していると考えられます。

3 答弁者(長)も会議の出席者である  - 白熱した議論・論争 -

⒈ 長との白熱した議論・論争のための議員の政策提案・提言を
  議会の活性化のひとつとして、また、地方分権下の地方議会のあり方・役割として、よく「議員
 の対案や提言等をもって、長等との白熱した議論等」が求められているとしています。
⒉ 長との白熱した議論・論争のための反問権・反論権の付与
  議員が長等に対して、上記のように政策提案や提言等を行うのであれば、長等に対しても、その
 意見等に対する反問・反論権がなければ議論にならないとする意見があり、多くの議会で長等に付
 与されています。
⒊ これらについて、「是非」を論じるのでなく、会議に白熱した議論や論争が求められていること
 からも、最早、長等は会議の出席者であり、単に、議案等を提案・説明するのみの立場ではないこ
 とは明確です。
⒋ 前述しているように、あるいは、白熱すればするほど、思わぬ言動が出ることは十分に考えられ
 るので、答弁に対する不適切な言動への取扱いは、議員と同等になされる必要があります。

説明員に対する言動についても規定化しよう
  - 「ない」なら「作る」 根拠がないと逃げられる -

⒈ どのような方法によるか
 1) 当然、長にその旨をお話する必要はあるでしょうが、会議の主宰者は議長であり、会議の秩序
  維持・保持、運営等に関する事項であることから、さらに議員と同じような措置をとるだけの話
  ですから、これが理解されないということはないと思われます。
 2) 根拠を示すこと、執行機関に対するものであること、さらに議会の議決によることが最も適切
  であると考えますので、これらを勘案すれば、「会議規則」「委員会条例」が妥当と考えますが
  少なくとも「運営(運用)規程」には必要です。

⒉ 説明員の秩序維持と不適切な言動に対する措置の範囲
 1) 議場の秩序維持と不適切な言動の範囲
   これまでも議員の取扱いに準じていると考えられます。範囲的には特に、説明員だからという
  ことはありませんし、議場にいる「何人も」であるので、議員に該当する内容をそのまま説明員
  の範囲とすることに問題はないと考えます。

⒊ 措置の内容
 1) 地方自治法第129条の「制止、発言の取消し、発言の禁止、退去」について、「発言の禁止と
  退去」は、十分に検討することが必要かと考えます。
   発言の禁止と退去は、当該発言を一時的に禁止や退去に留めないと当該議案の審議や当日の議
  事日程における進行ができない状態となり、最悪、流会となる可能性があります。
 2) 会議規則第54条第1項、第2項も取り入れことが適当です。長と言えども、答弁が質問内容
  を超えて行政全般の長の意見を述べたり、あまりに長い答弁、とりとめのない答弁なども考えら
  れますので、まさに、「簡明でない、議題外にわたり」に該当することになります。また、不適
  切な発言に際しては、まず、注意から入るケースもあると考えられます。

⒋ 発言の取消し
 1) 現行も説明員の発言取消しについては、議員の例に準ずることとしています。
   しかし、明確にされていませんので、ケースバイケースでやられることが多いようです。
   統一性、一貫性がないと、発言の取消しの内容によっては、問題や疑義が生じます。
 2) 発言の取消しは、その内容を明確にし、慎重に行う必要があります。
   議員の発言は公式な発言であり、発言には責任を持たなければなりません。一度なされた発言
  は記録としても記憶としても残るものであり、当該議員の資質にかかるものとなります。
   説明員も同様です。会議規則第64条の規定を説明員に当てはめることが必要です。
 3) 議員の発言の訂正では、発言の趣旨を変更するようなことはできません。
   訂正についても、前記のとおりです。
 4) 議員が説明員に対して、発言の訂正や取消しを求めることはどうでしょうか。
   当該議員に直接的にかかる発言内容であれば、できると解しますが、やはり、規定化すべきも
  のです。なお、議長はこのような議員からの発言があれば、議長は本人の意思を確認する必要が
  あると考えます。
   議長は、その内容によっては、会議録から削除する旨を宣告することも考えられます。
   例えば、長が相手の議員に「無能」「能無し」などの発言は、不適切な発言と断定できますが
  本人が「了承しなければ」取消しはできませんが、配布用の会議録に不適切な発言を掲載してお
  くことは議会の秩序維持、安定性の観点から、削除すべきと考えます。
 5) 説明員の答弁内容について、議員が発言の訂正や取消しを求めることはどうでしょうか。
   これは、基本的には「できない」と考えます。後刻、指摘することによって、説明員が自ら申
  し出ることが適当だと考えます。
 6) 閉会中に説明員となっていた者から発言の取消し・訂正の申出があったときはどうしますか。
   その内容によって、単純な誤りや明らかな誤りである場合は、議長が許可することはできると
  考えます。その際は、次の会議で報告することが適当です。
   訂正することによって、その趣旨が変わるものは、訂正できません。場合によっては、議員の
  判断が変わる恐れがあるからです。

規定は大まかにでも

⒈ 規定は大まかにすることが適当
  前述しているように、詳細に考えると、「発言の禁止や退去」について、また、答弁者にどのよ
 うな措置(謝罪等)を求めるかなど、問題も多く、これを詳細に規定すると、かえって、硬直化して
 しまい、ケースによってはうまく対応できないという状況も生じるかもしれません。

⒉ 基本は、議員の取扱いを準用
 ➀ 「説明員の不適切な言動に対しては、議員の取扱いに準じて、議長がその都度措置する。」
 ② 「議員の質疑・質問において、説明員により侮辱を受けたとき、または議員の私生活等に
  わたる発言がなされたとき、当該議員は発言の取消し及び陳謝を求めることができる。」
 ➂ 「説明員の答弁が、議題外にわたる、あるいは、簡明でないときは、議長は注意し、改善さ
  れないときは、発言を禁止することができる。」(発言の禁止は一時、冷静を促す)
 ④ 「説明員の発言の取消しについては、議員の取扱いに準ずる。」
 ➄ 「何人も議場において、録音・撮影をするときは、議長の許可を得なければならない。」
 などが一例です。

説明員に対する懲罰はできない

⒈ 議員の懲罰
  議員の懲罰には、地方自治法第134条により、同法第135条の種類や除斥、同法第137条の欠席
 議員の懲罰、会議規則第97条第2項の秘密の保持がある。これを説明員に対しても、「科す」こと
 ができるだろうか。

⒉ 議員の懲罰を説明員に準用することはできるか
  結論から言えば、できないと考えます。議会の自律権による罰則規定ではあっても、これを直ち
 に説明員に科することはできません。
  内容によっては、議長や議員が「陳謝を求める」ことは可能であると考えます。
  また、規定化することも「強制力はない」ものの、可能であると考えます。

⒊ どうしても納得いかなければ 刑事・民事に
  本人がどうしても納得いかなければ、議員個人が、侮辱罪や名誉棄損罪などで被害届や告訴の
 方法をとることは可能です。